なぜモーツァルトの音楽は便秘症など消化機能低下の改善に良いのか  
 
 
現代社会に生きる人間には、人間関係の嫌な煩わしさを始め、働き過ぎや生活不安、精神的な悲しみが増大しています。こうした要因は、大きな不快ストレスになって、健康を支えている自律神経にも悪影響を及ぼしているのです。その結果、不眠症や耳鳴り難聴、うつなどに加えて、便秘症などの消化機能の低下も余儀なくされています。こうしたいわゆる不定愁訴が始まるだけでなく、一方で糖尿病や高血圧、高脂血症、動脈硬化などの生活習慣病も引き起こしているために、こうした自律神経のアンバランスは大きな社会問題になっていると考えられます。

 人間の消化機能は主として、食物を効果的に分解して小腸の柔突起から吸収しやくする段階と、吸収されなかった繊維等の不要な物質を大腸の蠕動運動によって排泄する段階から成り立っています。例えば、ごはんなどの炭水化物は、唾液に含まれるアミラーゼによって、麦芽糖に分解されて胃を経て十二指腸に到達します。ここでは、マルターゼという消化酵素を含むすい液が分泌される結果、麦芽糖はブドウ糖にまで消化され、やがて小腸から吸収され細胞のエネルギー源になるのです。同じように、蛋白質は胃液のペプシン、すい液のトリプシンやペプチターゼによってアミノ酸にまで分解されますし、脂肪はすい液のリパーゼによって脂肪酸とグリセリンにまで分解されて吸収されます。そして分解されなかった物質は大腸の蠕動運動で肛門へと送られて外へと排泄されるのです。

 このような消化液の分泌と蠕動運動は、人間の意志とは無関係に機能する自律神経の中でも、心身をリラックスに導く副交感神経によって促進することがわかっています。反対に、体を活動状態に導く交感神経は、消化機能を抑制するのです。特に、延髄という脳神経の一部から出ている顔面神経や舌因神経は副交感神経として唾液腺に、また迷走神経は副交感神経として胃やすい臓、小腸に分布している一方、脊髄の下部に位置する仙髄からは副交感神経として大腸に分布しています。したがって、現代社会の不快な精神的ストレスが増大すると、交感神経が優位に作用するようになるために、結果として副交感神経の出番が減少して消化機能が低下し便秘症などの症状が現れることになります。

 さて、モーツァルトの音楽には、心身をアクティブモードに導く交感神経にブレーキをかけ、心身をリラックスモードに導く副交感神経に作用する音の特性が豊富に含まれています。特に、およそ4000ヘルツという高い音の周波数と小川のせせらぎのような優しいゆらぎが和音とともにバランス良く存在しており、これらの音の特性が人間の脳幹部という両耳を結んだ中央部にある視床下部から延髄にかけての部位に作用する結果、副交感神経を作動させることができます。したがって、効果的な純粋で透明感に満ちたモーツァルトの音楽を聴き入ると、すぐに唾液が分泌されたり、その分泌量も増加します。また、食前に聴きことで唾液に含まれている消化酵素も増えてきます。加えて、消化機能を担う胃や十二指腸、小腸などのはたらきも改善されてくると同時に、腸の蠕動運動も回復して、便秘等の不快な症状も改善されてくるのです。


主な参考文献
1)山口時子監修:「便秘を治す45の方法」、講談社、東京、2001
2)高橋順子:「あなたも治る冷え性・便秘・生理痛」、永岡書店、東京、2002
3)田島強:「胃腸病」、永岡書店、東京、2002
4)金子実里:「腸をきれいにする本」、法研、東京、2002
5)後藤利夫:「腸イキイキ健康法」、主婦と生活社、東京、2002
6)松田有利子:「がんこな便秘も必ず治せる」、リヨン社、東京、2002
7)松田保秀:「腸を休ませると免疫力がアップする」、講談社、東京、2003
8)和合治久:「モーツァルトを聴けば病気にならない!」、KKベストセラーズ、東京、2004
 
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