なぜモーツァルトの音楽はアトピー性皮膚炎を予防し、美肌にに良いのか  
 
 人間の皮膚は、外界と接する最前線であるため、異物の侵入を防ぐバリヤー機能を果たしています。このバリヤーがうまく機能しなければ、外敵から身を守ることが不可能になります。皮膚は、外側から皮脂、表皮、基底膜、真皮という順番で構成されています。これらの構造がきちんと正常に再生されていれば、皮膚全体のツヤ、張り、そして柔軟性という美肌の3条件がそろいます。そういういう意味では、表皮にいくら高価な美容液をぬっても、本来の美しい皮膚や強い肌にすることは生理学的に不可能なのです。
身体の内側から美しく抵抗力のある肌をつくるためには、皮脂腺から脂分がしっかり分泌され、それを表皮が受けとめて、およそ15?20%の水分を維持することが重要です。また汗腺から汗が正常に出ることも大切です。こうした状態を保持していれば、免疫学的にも異物が皮膚から体内に侵入することは少なくなります。まさに、皮膚が免疫の最前線となるわけです。つまり、皮脂腺や汗腺から分泌される分泌液には、脂肪酸やリゾチームという物質が存在しているために、微生物を攻撃できるのです。
しかし、現代人は精神的なストレスや働き過ぎ、あるいは長時間労働などにより肌の抵抗力が弱くなっています。こうした生活が継続すると、自律神経のひとつである交感神経が休まる暇がありません。交感神経が過剰に働きすぎると、神経末端からアドレナリンが多く分泌されて、血管が収縮して血液の流れが悪くなり、新陳代謝が悪くなってきます。さらに、ストレスによって副腎皮質ホルモンがより多く分泌されたり、アレルギーに関係するIgEという抗体も増加してくるのです。また、リンパ球の機能が低下してくるために、ウイルスや癌細胞に抵抗する免疫力が低下することにもなりかねません。
一方、交感神経優位でアドレナリンが増えると、白血球のおよそ60%を占める顆粒球という免疫細胞がさらに増加するために、この細胞がもっている活性酸素も同時に増加し、肌荒れの原因になります。また、ストレスホルモンであるコルチゾールは脂肪を蓄える作用があるので、肥満にもつながります。さらに、新陳代謝が悪くなると、皮膚の老廃物の処理能力が落ち、皮膚の再生力が低下するとともに、真皮をつくるコラーゲンやエラスチンという物質の合成能力も低くなってきます。この結果、皮膚の乾燥、しみやくすみの原因にもなります。このように、現代人の交感神経優位な生活スタイルは、美肌の悪化と密接な関係があるのです。
自律神経のアンバランスによって、皮膚が乾燥したり皮膚の再生力が低下すると、本来のバリヤー機能を果たせなくなります。すると、ダニやカビなどの外来性の異物が体内に侵入しやすくなるために、皮膚で過敏な免疫反応が生じます。この反応はアトピー性皮膚炎として、ドライスキンとかゆみなどの不快な症状を伴って現れてくるのです。異物の侵入機会が増加する結果、これに反応するIgEという免疫抗体も増加したり、白血球からヒスタミンなどの物質も多く放出されて、かゆみや炎症が生じてくると同時に、白血球の一種の好酸球も増加してきます。

こうした状況にブレーキをかけて、本来あるべき皮膚のバリヤー機能を回復させるためには、交感神経にブレーキをかける副交感神経の出番をつくってあげることが肝要になります。ここで登場するのがモーツァルトの音楽なのです。モーツァルトの音楽には、およそ4000ヘルツ以上の音の高い周波数が、シンプルな音の繰り返しとなるゆらぎと一緒に、豊富に含まれています。さらに、音同士のぶつかり合いで生じる12000ヘルツ以上の非常に高い倍音も組み込まれています。こうした音楽は、内耳のうずまき管にあるコルチ器を通って脳に達し、処理された後に副交感神経を効果的に刺激してくれるのです。モーツァルトの音楽を20〜30分間集中して聴き入ると、唾液の分泌量が増加したり、手足の表面体温が高くなってきます。
この現象こそ、副交感神経にスイッチが入ったことを物語っています。したがって、血管が拡張して血行が改善するとともに、交感神経にもブレーキがかかり、皮膚の新陳代謝が良好になるのです。すると、皮膚の再生力や分泌能力も回復し、肌に潤いが戻り、アトピーでみられる乾燥肌や皮膚のかゆみなどの症状も改善されてくるのです。
モーツァルトの名曲に耳を傾け、副交感神経を活性化して、肌の抵抗力や保湿力をぜひ取り戻してください。


主な参考文献
河野友信監修:『自律神経失調症を治す本』(ナツメ社)
篠原佳年・松澤正博共著:『モーツアルト療法』(マガジンハウス)
和合治久ほか:「音楽療法の生体機能への影響と医学的意義」(埼玉医科大学短期大学紀要)
和合治久ほか:「モーツアルトの音楽が健康人女性の血圧、心拍、唾液IgA,及び好中球に及ぼす影響」(埼玉医科大学短期大学紀要)
ドンキャンベル・和合治久共著:『アマデウスの魔法の音 美肌力』(アーティストハウス)
ドンキャンベル・和合治久共著:『アマデウスの魔法の音 再生力』(アーティストハウス)
和合治久著:『花粉症 塗るだけ聴くだけ免疫療法』(講談社)



 
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