なぜモーツァルトの音楽はインフルエンザなど風邪の予防に役立つか  
 
 
一般的に免疫とは、その名の示すように疫から免れること、つまり感染症を引き起こす病原体から身を守ることを意味しています。人間は絶えず食事をしたり空気を吸って呼吸しているために、食物や空気に含まれるさまざまな細菌やカビ、あるいはウイルスなどの微生物が消化管や呼吸器官から体内に侵入してきます。しかし、人間には侵入する微生物を撃退する免疫細胞や免疫物質が血液や臓器の中に存在するので、これらの微生物による感染から免れることができるのです。

 しかし、こうした免疫の力が減少すると、さまざまな病原体による感染症が発生してきます。この観点で、日頃から免疫力が低下しないように生活することが大切でしょう。現代人は残念なことに、日常生活の中で精神的な苦痛が多くあり、我慢を強いられている結果、不快なストレスが蓄積して、健康を支えている免疫細胞の中でも特にリンパ球の機能が低下してきます。それと同時に、人間の意志とは関係なく作動する自律神経のバランスが崩れてくるのです。特に、心臓や肺機能を活発にする交感神経が優位にはたらき、いつも緊張した状態になります。そのため、心身を安静に導く副交感神経が作動できず、さまざまな細胞の分泌能力も低下してきます。

 交感神経が緊張し続けると、目や鼻、あるいは口や消化管の分泌機能が低下して、病原体の侵入する機会が増大します。涙や唾液、鼻水や消化液、汗などには、インフルエンザウイルスを撃退できるIgAという免疫物質が含まれているので、粘膜面から入ってくるインフルエンザウイルスを抗原抗体反応によって攻撃し、感染を防御することができるのです。しかし、副交感神経の出番が少なくなっている今日では、そうした分泌液の量も減少しているので、感染症にもなりやすくなっているのです。

 さて、風邪というのは、医学的にみると、鼻腔や咽頭など上気道に生じる感染のことです。多くは炎症が気管や気管支にも広がり、痰や咳が出やすくなります。この風邪を引き起こす病原体のほとんどはウイルスによるものでり、鼻炎症状の著しいライノウイルスや悪性で大流行を引き起こすインフルンザウイルスは有名です。乾燥する季節になると流行するのが、インフルエンザでしょう。このウイルスを撃退するのは、特に粘膜面に分泌されるIgAという免疫物質と、血液の中に存在するTリンパ球とかNK細胞と呼ばれて免疫細胞です。したがって、こうした免疫物質の分泌や免疫細胞の働きが、モーツァルトの音楽によって高まれば、感染症の予防にそれを活用することができるのです。

 事実、モーツァルトの音楽に豊富に含まれる純粋で心地良い高周波音と風のそよぎ音のようなゆらぎ効果、そして和音が多く音同士の衝突で生じる倍音という12000ヘルツ以上の高い周波数の音は、副交感神経に効果的に作用して、たとえば唾液の分泌を高めるばかりでなく、その中に含まれるIgAの量も増加させます。また、血行を改善して体温を上昇させたり、血液中に存在するリンパ球の数を増加させウイルスを攻撃するインターフェロンの分泌も高める作用のあることが判明しています。この意味で、モーツァルト音楽は、インフルエンザなどによる感染症を予防する上で深い意味をもっているといえましょう。


主な参考文献
1)和合治久編著:「動物免疫学入門」、朝倉書店、東京、1994
2)才園哲人:「身体を守る免疫の仕組み」、かんき出版、東京、2003
3)安保徹:「免疫革命」、講談社インターナショナル、東京、2003
4)和合治久、ドン・キャンベル:「アマデウスの魔法の音 免疫力」、アーティストハウス、東京、2003
5)和合治久:「モーツァルトを聴けば免疫力が上がる!」、KKベストセラーズ、東京、2005
6)田口文章監修:「ウイルス感染症がわかる本」、成美堂出版、東京、2006
7)和合治久:「脳と心に効く!母と子のためのモーツァルト」、PHP研究所、東京、2006

 
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